空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を 改正する法律
令和5年12月に、「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が施行されました。本改正法は、空家等の「活用拡大」及び「管理の確保」、「特定空家等の除却等」の3つの施策を柱としています。
1.活用拡大
(1)空家等活用促進区域
市区町村は、中心市街地や地域再生拠点等の区域のうち、空家の分布や活用の状況等から、空家の活用が必要と認める区域を「空家等活用促進区域」として空家等対策計画に定め、必要な措置を講じることを要請できるようになったほか、規制の合理化等の措置を講じることができるようになりました。また、同区域内では活用指針に合った空家の活用を、市区町村長から所有者へ要請することが可能です。
○空家等活用促進区域として指定されることが想定される区域
・中心市街地
例:空家等を商店街の店舗として活用し、中心市街地の商業機能や都市機能の向 上を図ります。
・地域再生拠点
例:空家等を、移住者用に交流施設として活用し、生活サービスの維持や確保等を図ります。
・地域住宅団地再生区域
例:空家等をスタートアップ企業等のオフィスや、通信販売の配送拠点として活用することによって、地域コミュニティの維持を図ります。
・歴史的風致の維持や向上を図るための重点区域
例:空家等を周囲の景観と調和する形で観光施設として活用し、観光振興、及び歴史的風致の維持や向上を図ります。
※制度運用にあたっての考え方等は、「空家等活用促進区域の設定に係るガイドライン」に示されています。
・空家等活用促進区域の設定に係るガイドライン
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001712344.pdf
(2)空家等管理活用支援法人の指定
市区町村長は、空家の活用や管理に積極的に取り組むNPO法人や社団法人等を、「空家等管理活用支援法人」に指定することができるようになりました。本制度は、同支援法人が空家の所有者等からの相談に対応すること等の取り組みを行うことを想定しています。
○指定対象となり得る、法人の取り組み事例
事例1:所有者の相談に応じ、空家の活用を行っている例
・空家の所有者と活用希望者をマッチングして、空家活用を推進。
・多様な分野の行政や民間主体と連携して、空家活用を含むまちづくりの協議会を開催。
事例2:所有者の相談に応じ、空家の管理等を行っている例
・自治体と協定を締結し、空家所有者・活用希望者の相談窓口を設置。
・所有者から委託を受けて空家の定期的な見回り等を実施。
・司法書士等の専門家や不動産事業者等と連携して所有者の相談に対応し、必要に応じて、不動産事業者等を紹介。
※空家等管理活用支援法人の指定に係る考え方は、「空家等管理活用支援法人の指定等の手引き」にて、示されています。
・空家等管理活用支援法人の指定等の手引き
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001710793.pdf
管理の確保
(1)特定空家化を未然に防止する管理
空家の増加が見込まれる中、「特定空家」(適切な管理がなされておらず、そのまま放置すれば周囲に著しい悪影響を及ぼす空家)になる前の段階から、「管理不全空家」(放置すれば特定空家となるおそれのある空き家)に対し、市区町村は指導・勧告が可能となり、勧告を受けた「管理不全空家」は、固定資産税の住宅用地特例が解除されます。
※固定資産税の住宅用地特例
・小規模住宅用地(200平方メートル以下の部分):1/6に減額
・一般住宅用地(200平方メートルを超える部分):1/3に減額
(2)管理不全建物管理制度の活用
建物所有者による管理が適切でないことが原因で、他人の権利が侵害される又はそのおそれがある場合、建物所有者に代わって建物の管理を行う「管理不全建物管理人」の選任を、市区町村が裁判所に請求することが可能になりました。
(3)所有者把握の円滑化
所有者把握の円滑化に向けて、空家等に工作物を設置している者(電力会社等)に、市区町村が所有者の情報提供を求めることができる旨が明確化されました。
特定空家等の除却等
1. 状態の把握
現行の法律では、市区町村長には、特定空家の所有者から報告徴収(行政から資料の提出や報告を求めること)を行う権限がないため、特定空家の管理状況等の把握が困難な場合があります。
→市区町村長に、特定空家の所有者に対する報告徴収権が付与され、特定空家への勧告・命令等をより円滑に行うことが可能となります。
2. 代執行の円滑化
(1)緊急時の代執行制度の創設
現行の法律では、特定空家の除却等の代執行を行うためには、緊急時であっても、命令等を経る必要があり、迅速な対応が 困難でした。
→法改正後は、緊急時に著しく危険な特定空家に対しては、命令等の一部の手続を経ずに代執行が可能となり、迅速な安全の確保が可能となります。
※緊急時に代執行を行う場合に省略できる手続きは、命令のほか、命令に付随する意見書の提出や公開の意見聴取等です。指導・助言・勧告は省略できません。
(2)代執行費用の徴収の円滑化
現行の法律では、略式代執行(所有者不明時の代執行)を行う場合は、代執行後に所有者が判明しても、裁判所の確定判決を得ないと、費用の徴収ができませんでした。
→法改正により、略式代執行や緊急代執行時においても、行政代執行法に定める国税滞納処分の例にならって、強制的な費用徴収が可能となります。
(3)財産管理人による空家の管理・処分
現行法では、土地・建物の所有者が不明の場合、利害関係人の請求により裁判所が選出した「財産管理人」が管理や処分を行うこととされています。
→法改正により、空家等の適切な管理のために特に必要があると
認めるときは、市区町村長も「財産管理人」を選任請求が可能になります。
【詳細はこちら】
・空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(本文)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001621962.pdf
・新旧対照表
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001462675.pdf
・参照条文
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001621964.pdf
・空家等管理活用支援法人の指定等の手引き
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001710793.pdf
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